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最判昭57.3.12

工場抵当法と抵当権者の原状回復請求権

<判事事項>(争点)

工場抵当法に基づいて、工場のある土地や建物と一緒に、抵当権がつけられた動産が、その工場から抵当権者の同意がないのに運び出された場合に、抵当権者は原状回復請求権(運び出された動産を工場に戻すよう請求する権利)はあるのか、ないのか。

【参考】判事事項(原文)
 工場抵当法2条の規定により工場に属する土地又は建物とともに抵当権の目的とされた動産が備え付けられた工場から抵当権者の同意を得ないで搬出された場合と抵当権者の原状回復請求権

<裁判要旨>(結論)

工場抵当法に基づいて、工場のある土地や建物と一緒に、抵当権がつけられた動産が、その工場から抵当権者の同意がないのに運び出された場合、第三者が即時取得をしない限り、抵当権者は、運び出された動産を元の置いてあった場所(工場)に戻すことを請求できる。

【参考】裁判要旨(原文)
 工場抵当法2条の規定により工場に属する土地又は建物とともに抵当権の目的とされた動産が、備え付けられた工場から抵当権者の同意を得ないで搬出された場合には、第三者において即時取得をしない限りは、抵当権者は、搬出された目的動産をもとの備付場所である工場に戻すことを請求することができる。

<判決理由>(理由)

抵当権者の同意がないのに運び出された動産については、第三者が即時取得しない限り、抵当権の効力があるため、第三者が占有する動産に対して抵当権を行使できるので、抵当権の担保価値(抵当権を行使した場合に回収できるお金の額)を保護するには、その動産の処分を禁止するだけでは不十分で、運び出された動産を元の置いてあった場所に戻して現状を回復するべき必要があるから。

【参考】判決理由(原文) 
 抵当権者の同意を得ないで工場から搬出された右動産については、第三者が即時取得をしない限りは、抵当権の効力が及んでおり、第三者の占有する当該動産に対し抵当権を行使することができるのであり(同法5条参照)、右抵当権の担保価値を保全するためには、目的動産の処分等を禁止するだけでは足りず、搬出された目的動産をもとの備付場所に戻して原状を回復すべき必要があるからである。

<過去問の出題履歴>

令和3年度、問題29、選択肢3

<裁判所ホームページ>(外部リンク)

「最判昭57.3.12」の裁判例情報

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