令和4年度(行政書士試験 過去問の解説)

問題46 民法・債権者代位権

正解例「(Aは、Cに対し)Bの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使して、塀の撤去を請求することができる。」(40文字)

 

問題文に「Aは、Cに対し、どのような請求をすることができるか」とあるので、「〇〇を請求することができる」という解答にすればOK。

(大判昭4.12.16)(H20、問30、肢オ)

 

まず、問題文を整理すると、Aは、工場を建てるために、Bから甲土地を借りましたが、借りる権利(賃借権)の登記はしませんでした。

そしたら、甲土地の引き渡しを受ける前に、甲土地について何の権利もないCが、AとBに無断で、甲土地に塀を建てました。

そのせいで、Aは、甲土地で工場を建てる工事を始められないので、塀を何とかするようBに頼んだけど、Bは何もしてくれませんでした。

この場合に、Aは、Cに対して何ができるのか、という話です。

 

Aが、Cに対して請求したいのは、もちろん塀をどかすこと(塀の撤去)なので、「どのような請求」の部分は「塀の撤去を請求することができる」となります。

塀があることで、甲土地の使用が妨害されているので、塀の撤去を請求することは、物権的請求権のうち「妨害排除請求権」に該当します。

 

次に、Aが、Cに塀の撤去を請求できる根拠は何なのか、という点ですが、Aは、Bから甲土地を借りている賃借人なので、自分に甲土地を借りる権利(賃借権)があることをCに主張することが考えられます。

土地を借りる権利があることを、第三者に主張するには、民法605条にある通り、賃借権の登記をしていることが必要ですが、問題文に「登記はしてない」とあるので、このケースでは、Aが、賃借権を根拠に、塀の撤去を請求することはできません。

(また、甲土地は更地なので、借地借家法10条1項は使えません)

 

でも、甲土地について、Aは、賃借権という債権を持っている債権者なので、債務者(B)が何もしない場合、Aは、債権者代位権を使って、Bの権利を代わりに使う(代位行使する)ことができる、という判例があります。

 

Bが、Cに対して、塀の撤去を請求する場合は、B自身の権利(所有権)に基づく妨害排除請求権を行使することになるので、Aは「Bの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使する」ことになります。

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